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吟醸酒用の麹米は甑(こしき)を使って蒸す。蒸し上がると、文治と呼ばれる木製スコップで掘り出し、小桶(メシダメ)に移しかえて、さらし場(放冷場)へ運ぶ。

酒の味わいを左右する蒸米の良し悪し
洗米を終えた後、一晩、蔵で眠らせて枯らした浸漬米は、翌朝、蒸し(ふかし)にまわされます。熱い蒸気で米を蒸すのです。そのため、酒蔵では蒸米のことを「ふかし」と言ったりします。ついでに言うと、蒸しあがりの状態の点検を行うことを「検蒸」(けんじょう)と言います
「今日の検蒸は何時だったかな?」
「えーと、午前九時です」
というふうに使われるわけです。原料白米を「研ぐ」「洗う」「蒸す」「冷却」する一連の作業場を原料処理室と呼んでいますが、蒸米を造るところを「釜場」(かまば)と言います。

一般の家庭でも蒸し器でもち米をふかして赤飯を作ったり、サツマイモを蒸かしたりしますが、酒蔵で扱う米の量はたいへんなものですから、それなりの道具が不可欠です。
八海醸造では一日に8トンの蒸米が必要なのです。普通酒用と本醸造酒用の蒸米がそれぞれ3トン、吟醸酒と純米吟醸酒用が2トン。これで合計8トンとなります。それも、ただ蒸せばいいというのではありません。蒸米の良し悪しが酒の良し悪しにも大きく影響します。

蒸しの後には、その蒸米を使って麹を育てるという仕事が待っています。また、酒母にも使います。もろみタンクに仕込む掛け米にもなります。ここで、もう一度、日本酒はどういうふうに造られるのか、振り返ってみましょう。

まず、酒母は酵母を大量に純粋に培養したもので、麹が蒸米に含まれている澱粉質を糖化します。そして、その糖(ブドウ糖)を栄養として酵母が増殖するとともに、アルコール発酵を行います。糖化とアルコール発酵はひとつのタンクの中で同時に進行し(並行複発酵ですね)、そのうえ、アルコール発酵だけでなく、さまざまな成分が生成されて、酒の味も造りだします。
そういうわけですから、麹の質、酒母の質、さらには酒の味わいにまで、蒸米の良し悪しが関わってくるのです。

では、どんな蒸米が理想なのでしょうか。これは昔から「外硬内軟」(がいこうないなん)と言われて来ました。読んで字の通りで、一つひとつの米粒の外側は硬く、内側は柔らかい。それが外硬内軟の蒸米です。糖化も発酵もそれなりの日数をかけたほうが、味わいのいい酒ができますから、もろみにした時、すぐに米が融けてしまうようでは困るわけで、ある程度の硬さが必要なのです。
さらに、麹のことを考えると、これはもう外硬内軟でないと、いい麹ができないのです。蒸米が柔らかすぎると、麹の菌糸が米粒の表面にまわってしまい、こういう麹では充分な力を発揮しません。しかし、米の外側が硬く、内側が柔らかければ、菌糸が米粒の表面に広がりにくくなり、柔らかい内側に向かってどんどん伸びていきます。麹室の蔵人はこう言います。
「盆栽を考えてみてください、根がこまかくしっかり張っているからこそ、あんな小さな鉢でも元気に育つのです。麹もそれと同じことですよ。菌糸が米粒の内側にまで入り込んでくれれば、元気な麹になるのです」

 

蒸気機関車を思わせる風貌の連続蒸米機。内部は8室に分かれ、約1時間かけて出口まで移動して行く間に米を蒸し上げる。

便利な機械でも任せられない仕事がある
外硬内軟の蒸米を毎日8トン蒸す。それが八海醸造の釜場で行なわれていることなのです。しかし、8トンの蒸米を、間違いなく、蒸し出すためには、それなりの設備が必要になります。また、技も必要になります。まず、設備から説明します。

八海醸造には連続蒸米機が2台、甑(こしき)が1基あります。八海醸造では三つの酒蔵が肩を寄せ合って建っていますが、連続蒸米機は、中心部にある学校蔵と呼ばれている原料処理室(学校蔵と言われているのは、以前は学校の体育館だったのを移築したからです)に1台、そして、その東側の吟醸蔵と呼ばれている蔵にも連続蒸米機が1台あります。甑は、吟醸蔵の連続蒸米機の隣りに置かれています。

連続蒸米機や甑が活躍するのは早朝ですが、その様子はなかなか勇ましいものです。とくに連続蒸米機はその姿と言い、ところどころからシューシューと蒸気を噴きだす姿と言い、何となく蒸気機関車を思わせます。内部は8室に分かれていて、その中をステンレスの金網で作られたベルトコンベア上にうすく積まれた米が、1時間かけて入り口から出口まで移動して行く間に蒸気で米を蒸すのです。そして、出口のところには放冷機が接続していて、送風機の風で米を冷やすようになっています。この連続蒸米機の蒸米は普通酒と本醸造酒に使用されます。一方、吟醸蔵の連続蒸米機も同じ方式のもので、吟醸酒と純米吟醸酒の掛け米用の蒸米を蒸します。麹米は甑で蒸します。
連続蒸米機は便利な機械です。大量の蒸米を効率的に処理できます。しかし、やはり機械まかせにはできません。その具体例をひとつ紹介しましょう。

洗米が終わった米は連続蒸米機の隣りの浸漬タンクの中で、水を切った状態で枯らしが行なわれ、ベルトコンベア方式で連続蒸米機に送られるのですが、浸漬タンクは全部で14あります。
八海醸造では、その浸漬タンクの米を、毎朝、木の棒で突いて、ベルトに落とし込んでいます。この作業を蔵では「米突き」と呼んでいます。上から水を流しても米は落ちます。そのほうが手間はかかりません。でも、そんなことはしないのです。米突きは、宿直明けの蔵人の大事な仕事になっています。なぜ、水を流さないのでしょう。
「水で米を落とす? そんなことをしたら、せっかく枯らしをして、水分量を調整した米なのに、また、水を吸ってしまって、やっこい(柔らかい)ふかしが出来てしまいますよ。だから、手間はかかるけど、この方法が一番なんですよ」
それが、ある日の宿直明けの蔵人の答えでした。

 

 
 
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井出耕也[フリージャーナリスト]

 

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