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大吟醸酒の麹米や酒母に使う蒸米は、蔵人が肩に担いで麹室の前の放冷場まで運んでいく。機械化が進んでも、この光景が酒蔵から消えることはないだろう。

新しい機械にも先人の知恵と工夫が息づいている
連続蒸米機が実用化されたのはそんなに昔のことではありません。その前は、もっぱら甑で米を蒸していました。大きな釜に水を張り、その下で火を燃して、高温の蒸気を発生させ、その蒸気で米を蒸していたのです。「釜場」という言葉もそこから生まれたのです。大きな釜で熱いお湯をわかしていたからです。この「釜場」を担当する蔵人を「釜屋」と言っていましたが、昔は「釜を割るぐらいでなければ一人前の釜屋ではない」と言われたものです。

いい蒸米のためには、高温の蒸気が必要になります。そのため、どんどん火を焚くわけですが、そうすると、釜のお湯はだんだん少なくなっていって、やがて、上のほうでは釜肌が露出して、その熱い釜肌に蒸気があたると、乾燥した高温の蒸気がでます。こういう蒸気で米を蒸すと、外硬内軟の蒸米ができやすくなります。しかし、空焚きしているようなものですから、釜が割れてしまうこともあるわけです。
毎日、釜を割るようでは困りますが、釜が割れるか割れないか、ぎりぎりのところで蒸すような腕を持った釜屋がいい釜屋だと言われたのは、そのためです。

この甑(こしき)には昔は薪や石炭を使っていました。今はそんなことはしていません。ボイラーで発生させる蒸気を使うのです。ボイラーの蒸気を通すパイプを釜の中にいれ、その熱で釜の水を加熱して蒸気を発生させます。しかし、それだけでは「釜を割る」ような高温高圧の蒸気はできません。そこで、釜の上部に別のパイプを張りめぐらし、そこに高温高圧の蒸気を通します。蒸気は圧力をかけると温度が上がりますから、釜肌を焼いたのと同じような状態になるわけです。
「酒造りも機械化が進みましたが、新しい機械が出てきたと言っても、お手本になっているのは、昔からの酒造りの知恵なんですよ。面白いものですね」
それが前新潟県醸造試験場長の鈴木常務の感想です。鈴木常務によると、そういう例は甑に限らず、たくさんあるそうです。昔の人が経験的につかんだ知恵と工夫が今も生きているのです。

大吟のふかしは機械に任せず、自分の肩に乗せて運ぶ
甑には蔵人の手で米を張ります。そして帆布をかけて蒸します。もうもうとあがる蒸気で帆布は大きく膨らみます。そして、蒸しが終わりに近づいた頃、釜の上部の空焚き用の蒸気パイプに高温の蒸気を通します。そして、蒸し終えた蒸米は、木で出来た小さなスコップのような道具で掘り出します。この道具は「文治」(ぶんじ)と言われています。熱い湯気があがる甑に半身を入れて、ふかしを掘り出すのは、なかなか勇ましいものです。

酒蔵ではそんな光景を、寒い冬の大吟造りの時期に目にすることができます。大吟醸酒のような特別な酒造りには、昔からの蔵人の技を継承していくという意味合いも含んでおり、甑を使って蒸しを出すこともその一つです。大吟醸酒の麹米や酒母に使う米は、甑で蒸した蒸米を小桶に入れて、その小桶を肩に担いで階段をあがり、麹室の前の放冷場まで運びます。リフトもあるのですが、なぜか、リフトは使いません。そこで、蔵人にちょっと質問してみました。なぜ、リフトを使わないのですか?
質問された蔵人はちょっとびっくりした顔をして、こう答えました。
「そんなことを考えたこともなかったな。大吟醸酒のふかしは、自分の肩に乗せて運ばないと、大吟を造っているという気がしないですよ。気合いというのかな。どうしても、そういうものがないとね」

甑は、もう、昔の甑ではありませんが、酒造りにかける思いは、昔と同じ。いや、それ以上と言ってもいいようです。八海山という酒の味わいの中には、そんな蔵人の思いも溶け込んでいるのです。機械任せでは、この味わいは逆立ちしても出てきません。

連続蒸米機から出た米は放冷機で冷まし、同時に水分量を調節する。麹米の品質を安定させるために欠かせない作業だ。

目指す品質にかなう麹を求めるために
妥協はしない

ところで、蒸米の理想は外硬内軟と言いましたが、さらに、水分量も重要になります。硬い蒸米が欲しかったら、洗米時に吸水させる水分量を減らしておけばいいわけですが、あまり減らしすぎると、蒸米に芯が残ってしまい、「生ふけ」(なまふけ)という状態になってしまい、これではとてもいい蒸米とは言えません。

連続蒸米機に入れる直前の状態の水分量(吸水パーセント)は29%というところが限界です。これ以下では生ふけになってしまうわけです。そして、蒸し終わった段階では、水分量は10%ほど増えますから、蒸米の水分量は39%が限界ということになります。
とは言え、毎日の酒造りで、常に限界の水分量の蒸米を蒸しあげるのは、ちょっと無理があります。安定した品質の蒸米が必要だからです。「昨日はうまくいったけど、今日は生ふけになってしまった」などということでは困ります。

八海醸造では水分量の目安は44%前後に置いています。毎日の仕事ということを考えるなら、これでもかなり自慢できる水分量と言えると思います。しかし、このままの水分量では、いい麹はできません。米の品種によって多少の違いもありますが、蒸米に麹をまく時の水分は、たとえば、普通酒用の麹にする蒸米では35-36%、大吟醸酒用の麹に使うのなら31-33%に下げなくてはなりません。
そこで放冷という作業が必要になるのです。蒸米の温度を下げながら、水分量も減らしていくのです。

必要なだけの水分量を備えた蒸米。それが理想なのです。そのため、昔から釜場では、「捻り餅」(ひねりもち)で水分量をチェックしていました。蒸したての熱い蒸米を少し手のひらに取って、手のひらの上で蒸米をこねて、餅のようになったものの感触で水分量を測ったのです。これは今でも行なわれています。経験を積んだ蔵人なら、「捻り餅」の感触でかなり正確に蒸米の状態を判定できるからです。

蔵で使うすべての麹を吟醸酒並みの突破精に
麹の状態は「突破精」(つきはぜ)が理想と言われています。麹菌の菌糸が米粒の内部に破精込んでいる状態を突破精と言います。八海醸造では大吟醸酒や純米吟醸酒だけでなく、本醸造酒はもちろん、普通酒に使う麹まで、吟醸酒製造用の突破精に育て上げています。八海醸造ほどの生産量の蔵で、蔵で使うすべての麹を吟醸酒並みの突破精にしているような蔵はそんなに多くはありません。
しかし、八海醸造の目指す品質の酒造りにかなう麹を求めるなら、たとえ、普通酒と言えども、突破精でなくてはならない。それが八海醸造の考え方なのです。そのために、蒸米にも気を使っているのです。早朝の「米突き」も実はそんな気の使い方のひとつにすぎないのです。

 

 
 
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井出耕也[フリージャーナリスト]
 

 

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