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八海醸造の蔵の一角にある精米所。チヨダ式の醸造用精米機6台を備える。八海醸造が一年間に使う玄米6万俵のうち3万5000俵をここで精米する。

砥石で刃物を研ぐよりも丹念に米を磨く
精米パターンの設定が終ったら、スタートボタンを押します。
すると、玄米タンクの中の玄米が指定された量だけ、玄米移送ラインを通って、精米機に送り込まれ、精米が始まります。玄米は精米機の上から入り、下から出てきます。精米の途中で出る糠や砕米は自動的に選別されて、それぞれのラインで運ばれていきます。
しかし、一回、精米機を通過しただけではごくわずかしか精米されず精米は終りません。下から出てきたお米は、また、精米機の上に運ばれて、精米機にかかります。それを何度も繰り返しながら、ゆっくり、ゆっくり、精米されていくのです。
どのくらいゆっくりなのかと言うと、八海醸造では、たとえば、普通酒に使う60%精白の米の場合は、1800kgの玄米を28時間かけて精米しています。50%精白では42時間、35%精白ともなれば72時間もかけています。

もっと速くできないのでしょうか。ロールをうんと速く回転させたらどうでしょうか。この精米機の能力ではこれで精一杯なのでしょうか。高価な設備なのですから、能力をフルに発揮させて、効率よく使わなければ……。そう考える人もいるでしょう。実際、今の精米機でも、もっと速く精米することもできるのです。たとえば、60%精白なら18時間で終えてしまう能力があります。それなのに、八海醸造ではあえて28時間もかけているわけです。それ以上の精米歩合で精米するときも、この精米機の性能から言ったら、能力をフルに発揮した場合の所要時間よりもずっと時間をかけて精米していることになります。
では、もしも、合理化重視・コスト重視で、精米機の能力を最高に発揮させて、どんどん精米したら、どうなるでしょうか。
きっと、この蔵の精米機はしかめっ面をして、こう言うことでしょう。
「おい、おい、いいのかい。こんなに急いで精米したら、米が割れてしまうかもしれないよ。割れた米を使ったのでは、良い酒を造りにくいんだよ。米は一粒だって無駄にしちゃならねえ。この蔵の人たちはいつもそう言っているじゃないか」
酒造りとはどういうことでしょうか。それを米について言うなら、酒造りに必要な要素をできるだけたくさん引き出して、良いところはどんどん伸ばしてあげ、あまり必要でないものは取り去るか、酒造りの邪魔にならないようにしてあげる知恵と技を使うということです。

精米を失敗すれば、後々の酒造りにまで響く
米には炭水化物の他にたんぱく質や脂肪、マグネシウムなどの灰分も含まれています。たんぱく質や脂肪が多すぎるお米では良いお酒はできません。いわゆる雑味が出やすくなり、すっきりとした酒になりにくいのです。
そこで、高精白にすることによって、たんぱく質や脂肪などを減らし、米粒の中心部にあるでんぷん質の割合を高めるのです。このでんぷん質は麹菌により作り出される糖化酵素で糖分になり、さらに、酵母の働きで糖分がアルコールになります。だから、でんぷん質を良い状態で残すことが大切なのです。(米の成分表はこちらをご覧ください。)
玄米が精米され、酒になるまでには、いくつものハードルがあります。その最初のハードルが実は精米なのです。ここでしくじったら、後々まで響きます。

酒造りは一に麹、二にもと(酒母)、三に造り(もろみ)と昔から言われてきました。いい麹を育てるには上手に精米したお米が必要です。二のもとにも、三の造りにも同じことが言えます。だから、八海醸造はあえてゆっくりゆっくり精米しているのです。それは米粒の中にひそんでいる酒造りに必要な力を、とても大事にしているということでもあります。
ものが摩擦すれば当然、熱が出ます。精米機でも同じです。精米機のロールと米粒が擦れ合い、また、米粒と米粒も擦れ合って、熱が出ます。
その熱は八海醸造のようにゆっくり精米していても、米が熱を帯びるのを避けることはできないのです。あまり高温になってしまっては米の品質にも悪い影響があります。そこで、米温をできるだけ抑えるように操作するのですが、長時間かけて精米するのですから、米粒の水分はどんどん減っていきます。米が乾いていくわけです。
乾けば米は割れやすくなります。砕米がたくさん混ざっていては、麹米には使えませんし、良いもとや良いもろみを造ろうと思ったら、やはり砕米は邪魔になります。

精米と枯らしを終えた米は洗米し、水分を持たせた上で蒸す。写真は吟醸蔵用の洗米機。

玄米の米粒に含まれている水分は、15%から15.5%というところです。これを精米機にかけると、60%精白では12~13%に減ります。さらに50%精白では二桁を切って9%にまで減ってしまいます。
精米が終ったらお米は洗米し、必要なだけの水分を持たせた上で蒸します。しかし、精米機から出てきたばかりの米を水に入れたら、米粒はどんどん水を吸ってしまうでしょう。とくに高精白の米は水を吸いやすいのです。水を吸いすぎた米は、いい麹にはなりません。そこにも高精白で酒造りをすることの難しさがあるのです。
米粒の水分が15%程度なら、一晩、水に漬けておいても、40%ぐらい水を吸うだけですが、9%から12%なら、一晩で60%もの水を吸ってしまいます。そんなに水を吸ってしまった米を蒸したら、酒造りに使う米としては、柔らかすぎる蒸米になってしまい、淡麗で上品な酒造りには適さなくなってしまいます。
そこで精米が終ってもすぐに洗米にまわすことはしません。枯らしをすませてから洗米します。枯らしというのは、精米が終った米を常温で保存して、温度と水分の調整をすることです。その日数は精米歩合に応じて、20日から25日もかけます。
「扇風機で風をあてたら、すぐに枯らしが終るんじゃないの?」
そう考える人もいることでしょう。しかし、米に風をあてることは禁物なのです。風などあてたら米が割れてしまいます。時間をかけて米を冷やし、精米作業で減った分の水分を空気中から取り戻してやらなくてはならないのです。この精米後の枯らしの管理も精米所の仕事です。

酒造りのための精米にはどんな心遣いが必要なのか。八海醸造の6台の精米機が語りかけてくるお話は、ざっと、以上のようなものです。
なお、蔵の精米所とは別に、魚沼の酒蔵4社が共同で運営している精米所でも、八海醸造で使う米の精米が行なわれています。八海醸造が一年間に使う玄米の量はざっと6万俵ですが、そのうち3万5000俵が自家精米、2万5000俵が共同精米です。

 

 
 
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井出耕也[フリージャーナリスト]
 

 

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