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| + | 蔵の技術と誇りをかける + + 大吟醸酒の仕込みが始まると、日ごとに、蔵人の頬がそげ、目が鋭くなっていくのがわかるという。醪(もろみ)が酒になるか、それとも、酒にならないか、その境目を綱渡りしていくようにして造られるのが大吟醸酒だからだ。 米の精白度合ひとつとっても、他の酒とは段違いである。普通の酒の精白度は70%程度、吟醸酒では60%程度だが、大吟醸酒では35~40%にもなる。米粒の65~60%は糠となって捨てられ、小さい真珠のようになった心白部分だけを使うのである。しかも、大吟醸酒に使われる山田錦という酒米はとりわけ値の張る米である。その60%以上を糠にしてしまうのだ。 精白度合35%とか40%とかいう数字は、かつては夢のような数字だと思われていた。そこまで精白が進む前に米が砕けてしまったからだ。コンピュータで精米機を微妙に制御できるようになったため、この驚異的な精白度合が実現したのだ。しかし、精白には70~80時間はかかる。これほどの時間をかけて米を精白するのは、大吟醸酒をつくる時だけである。 洗米にも細心の注意が必要だ。最近では洗米も自動化が進み、米を水に漬けておく時間もコンピュータで正確にコントロールできるようになっているが、大吟醸酒の洗米だけは、今でも、米の微妙な違いを人間の目で確かめたうえ、ストップウオッチをにらみながら、蔵人の手で洗米が行われる。米に含まれる水分が多すぎても、また、少なすぎても、いい蒸米ができなくなってしまうからだ。ストップウオッチではかる洗米の時間は、もちろん、秒単位である。 そして、蒸しあがった米を麹室に運び込んで種麹をつける時も、米粒のひとつひとつに麹菌が理想的な状態で育つように神経を張りつめ、また、仕込みタンクの醪がゆっくりと発酵して酒になっていく間、醪のちょっとした変化も見逃さないように、昼夜を問わず、仕込みタンクの様子を確かめ、発酵を見守りつづけるのである。 小さなタンクだから神経が行き届く ひとつの仕込みタンクに入れる米の量は750kgである。そんな小さな仕込みをするのは、大吟醸酒を造る時だけだ。 大吟醸酒造りが酒蔵を支える 大吟醸酒は、以前はほとんど市場に出ることはなかった。こんなにお金と手間がかかって、しかも、ほんの少ししかできない酒を造っても、商売には直接結びつかなかったからだ。だから、それでも、あえて大吟醸酒を造り続ける蔵は珍しかった。それに加えて、昭和30年代後半から、日本酒の世界でも低コスト、大量生産を目指した酒造りが盛んになってしまい、大吟醸酒は急速に忘れられていった。 |
| 井出耕也[インターネット・パイロット] |
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