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米の持ち味を、酒の中に100%表現する 酒造りというオーケストラの演奏は、精米機のモーターの唸り声から始まります。とても力強い音です。さらに精米機の中を流れる米の、サラサラという音が加わります。米が流れる音は渓谷を流れる水音に似ています。精米所は八海醸造の蔵の一角にあります。自前の精米所を持っている蔵はそう多くないのですが、これも蔵のこだわりのひとつです。6台ある精米機はすべて醸造用の精米機で、HS−25U型が5台、やはりHS−26W型が1台。このHS−26W型は最新式のもので、2000年の夏に導入されたばかりです。
ところが、醸造用の精米では、この程度の精米歩合では、酒造りに使える米にはならないのです。飯米よりもはるかに深く、また、慎重に精米する必要があります。ただ米を削ればいいのではないのです。中心部を残して外側を削らなくてはなりません。60%精白ならば、米粒の中心部の60%だけが残るように精米するのです。 米そのものも違います。食べるお米を選ぶときは、食べておいしいかどうかということを基準にして選ぶのが一般的ですね。ところが、お酒にする米を選ぶときの基準はそれとは少し違うのです。おいしいかどうかよりも、いいお酒ができるかどうか。それが最大の基準になります。おいしいお米だからといって、酒造りに向いているとは限らないのです。 また、酒蔵の考えもあります。こんな酒を造りたいという目標があります。そこから、どんな米を使うかが決まってきます。酒造好適米にも飯米にもいろいろな品種がありますが、その中から、それぞれの蔵が目標としている酒の品質に合った米を選び出すのです。そして、選んだ米の持ち味、性質、素質を酒の中に100%表現する。それぞれの蔵が狙った酒質の酒ができるかどうか。それが大事なところです。
醸造用の精米機は飯米用の精米機とは精米の仕方が違っています。米粒を削って精米するのです。飯米用の精米機では、米粒と米粒をこすり合わせるようにして精米しますが、この方法で精米度を高くしようとすると、途中で米粒が壊れてしまいますから、高精白の米はできません。 では、醸造用の精米機は、なぜ高精白の米ができるのでしょうか。その秘密は円筒形の金剛ロールにあります。ダイヤモンドのことを金剛石とも言いますが、そこからもわかるように、金剛ロールは硬い素材を円筒形に成型したものです。醸造用の精米機の中では、この金剛ロールを高速で回転していて、そこに米粒を押し付けて米を削っていきますから、途中で米が壊れるようなことは少ないし、高精白にできるのです。 金剛ロールの表面は、うんと目の細かいヤスリのようにざらざらしています。金剛ロールの大きさは25インチ(外径635mm)と26インチ。一抱えほどの大きさです。色は少しパステルカラーがかった緑色です。ロールの素材に使われている研磨剤は、緑色炭化珪素研削材(グリーンデンシックGC)という名前のセラミックで、その研磨剤の色が緑色だからです。 緑色炭化珪素研削材の原料はケイ石とコークスで、これを電気抵抗炉で高温反応させて取り出します。そして、固めるために長石などを混ぜ、それを500トン級のプレス機で圧縮してロールの形に成型します。最後に最高1300度という高温で焼き固めてできあがりです。この作業には非常に高い技術が必要で、金剛ロールの製造は専門メーカーの仕事です。 ところで、包丁やナイフなどの刃物を研ぐのに使う砥石と、醸造用精米機の金剛ロールを比べたら、どちらのほうが硬いと思いますか。正解は「金剛ロールのほうが硬い」です。金属よりもずっとやわらかい米粒を研ぐ。だからこそ、硬く鋭い研磨表面が必要になるのです。 最良の精米方法は蔵人が見極める。そこに技がある 最新型のHS―26W型は、このロールを二基装備しています。ひとつは荒研ぎ用、もうひとつは仕上げ研ぎ用です。その他の5台はいずれもロールはひとつです。ロールがふたつあるほうが精米時間は短縮されます。 蔵の一角にある精米所の中は、6台の精米機が何種類ものパイプで縦横に結ばれていて、 そのパイプの中を玄米や白米、米糠が流れます。精米機と付帯設備がひとつのラインになっているわけです。 その付帯設備をご紹介すると、次のようなものがあります。 ○玄米張り込みタンク ○石等の異物除去装置 ○玄米移送ライン ○玄米予備タンク ○白米予備タンク ○集塵機 ○米糠移送ライン ○米糠タンク ○白米ライン ○操作盤 ○コンプレッサー 八海醸造にある精米機は、どれも一度に30俵(1800kg)の玄米を精米できます。その手順は次のようになっています。 まず玄米張り込みタンクに玄米を入れます。このタンクは二基あって、それぞれ9000kgの玄米を呑みこみます。次に操作盤で精米パターンなどを設定します。 精米パターンとは精米の手順のことで、目標とする精米歩合、ロールの回転数、また、その回転数をどれぐらいの時間、維持するか、モーターの出力はどのくらいにするか、米の温度は何度を上限とするかなど、何段階もの精米工程をひとつのパターンにしたものです。とくに重要なのはロールの回転数です。八海醸造では1分間に450回転から600回転の間で精米歩合の進行度に応じて細かく設定しています。 この精米パターンの制御は精米機の中のコンピュータが行ないます。精米パターンは30種類まで設定できます。もちろん、手動で制御しながら精米機を働かせることもできます。精米パターンは目標にする精米歩合や玄米の品種、性質などによって、設定を変えます。 お米を見極めながら、お米を傷つけず、お米の持っている力を100%引き出すようにするわけです。コンピュータ制御で精米作業が自動化されているとは言え、お米を見極め、どんな精米の仕方がふさわしいのか。それを最後に決めるのは蔵人であり、そこに技があるのです。 |
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