 
おととしの春、冊子『魚沼へ』(八海醸造発行)の取材で新潟を訪れました。銘酒「八海山」の水源にもなっている魚野川を源流から辿ったのですが、本当にきれいないい所でした。
振り返ってみると、学生時代の若いころの私にとって、お酒は完璧に「酔っ払う」ためのものでした。若いときって、泣いたり、笑ったり、何かに悩んだり、本当に忙しくて、それこそお酒をゆっくり味わう時間なんてないんですよね。
そんなとき、「いっぱい呑むと酔っ払ってしまう、酔っ払うとお酒の味がわからなくて困る」と書かれた作家の文章を何かで読んで。衝撃を受けました(笑)。自分の中にない感覚だったので、「そんなこともあるんだー」という感じでしたね。
それが気になっていたのか、知り合いが始めたお店で初めて、「味わう」という感覚を覚えました。独立して間もないころでした。そのあと、銘柄ごとに味が違うとか、本当に美味しいお酒の味を知ったのです。
今はお酒を呑むときは、じっくりお酒を味わいたい。こんぶの佃煮とか、冷奴などシンプルなものを器に盛って、箸、箸置をちょこんと置いて、ちびりちびりといただきます。量はだいたい1回に1合とか、2人で3合とか。
呑み方は冷(ひや)かお燗です。本当に美味しい日本酒は冷やさなくても美味しい。冷やしすぎるとかえって味がわかりにくくなっちゃう気がします。そういえば「冷」って、もともとは常温のお酒のはずなのに、最近は頼むとキンキンに冷やした冷酒を出されることがあります(笑)。だから外で呑むのはお気に入りの決まった店で、ということが多いですね。

ここ何年かは一年に何回か、親しい友人と「お月見の会」「七草粥の会」と称して呑んでいます。
この家に集まるときは1人1個ずつ酒燗器を持って、手酌でお酒を楽しみます。大人になると仲がよくてもなかなか会う機会がなくて、すぐに1年くらい過ぎちゃう。だから、お酒と持ち寄ったサトイモの煮付けなんか食べながら、「今、何がブーム?」とか「ねぇねぇ、こんなことがあったよ」なんて、女3人でたわいのない話をしながら過ごす時間が何より楽しいし、大切です。
ちなみに今年の十五夜は10月6日。でも、中秋の名月はちょうど六本木ヒルズの陰に隠れてしまう。とても残念です。(撮影 鈴木芳果)
|